あなたは129,593km(本日13km ⁄ 昨日19km)を走破したライダーです!

Australia - オーストラリア縦横断オートバイ旅行記 1988


第10章 アリススプリングス(43日目〜47日目)

43日目

ノーザン・テリトリー州に入った。ここからハイウェイの制限速度はなくなる。速度無制限である。しかし、相変らずのマイペースでオートバイを走らせる。

路上にはカンガルーや牛の死骸をよく見かける。車に撥ねられたものだ。死んだ直後らしく血を流しているものや、腐ってガスが溜まり風船のようにパンパンになっているもの。干からびて骨と皮だけのミイラのようになったものもある。思わず目をそむけてしまう。彼らが車の前に飛び出してくるため、ほとんどの車は、カンガルーバー等と呼ばれる太いパイプのガードをフロントに取り付けている。しかし、それでもぶつかれば車も無事では済まないだろう。オートバイの自分はなおさらだ。気をつけなければならない。

アリススプリングスの手前200kmほどのところで、エアーズロックへの分岐点がある。ここから左、西側に曲がれば250kmほどで世界最大の一枚岩、エアーズロックだ。しかし先ずはアリススプリングスを目指さなくてはならない。再会の約束を守るためだ。そのあと、またここまで戻ってくればいい。今はこの分岐を直進する。まっすぐ北へ。

周囲を岩山と荒野に囲まれた町、アリススプリングスに到着した。久々に見る信号機。巨大なスーパーマーケット。想像以上に大きな町。今まで走ってきたルートの寂しさを考えると、まるでオアシスのようだ。

ラリーのスタートの日まであと3日。ここで野村氏と香川氏を待とう。

(5,412km / Stuart Caravan Park, Alice Springs / August 17, 1988)

44日目

そろそろ誰かと会えるのではないかと思いながら、町の中を一日中ぶらぶらした。しかし、今日はとうとう誰とも会えなかった。

夕食には米を炊くことが多いのだが、コッフェルで一人分の米を炊くのはなかなかむずかしい。吹きこぼれやすく、火力の具合も微妙だ。芯メシやこげ付きなど失敗もある。しかし、今日は大成功。久しぶりにうまく炊けた。コッフェルの蓋を少しずらしたまま炊いたのがよかったようだ。ふつうは蓋を開けないのが常識だが、小さいコッフェルではこの方がいいのだろう。今日のメシは旨い。

(5,471km / Stuart Caravan Park, Alice Springs / August 18, 1988)

45日目

夕方、一台のオートバイがキャラバンパークに入ってきた。乗っているのは日本人だ。それも見覚えのある顔。なんとシドニーのビーチで会った山下氏ではないか。シドニーで、オートバイに乗りたくてウズウズしていた彼と会い、自分のオートバイを一瞬だけ貸したのだった。その後、彼はオートバイを入手したようだ。久しぶりだ。こんな所で会えるとは思ってもみなかった。彼も人を探していて、このキャラバンパークを覗いてみたのだという。しかし、残念ながらいないようだ。ここでは日本人を見かけない。そのことを確認すると、彼は他を探すために走り去った

彼から、今回のラリー出場者たちの宿泊施設が町外れにあることを教えてもらった。そこに行けば、なにか手がかりがつかめるかもしれない。自分はそこへ向かうことにする。オートバイを走らせ、夜のアリススプリングスを行く。

その広い敷地には、いくつかの平屋建ての宿舎が余裕をもって配置されていた。どこも選手たちで賑わっている。そのままオートバイで乗り入れて、ゆっくりと行く。しばらく探していると、日本人の集まりを見つけた。宿舎の前でバーベキューをやっているようだ。オートバイで近づいていくと、その中の一人がこちらに向かって来た。その顔を見て、感動が込み上げる。

香川氏に会えたのだ。ここまで来てよかった。今まで走ってきてよかった。彼は、すでに何日か前からここに来ていたのだった。ただ、まだ野村氏には会っていないという。彼はどこにいるのだろう。心配だ。

明日はラリーの予選があるという。応援に行くことを約束し、ひとまずキャラバンパークのテントに戻ることにした。

(Stuart Caravan Park, Alice Springs / August 19, 1988)

46日目

出場者の駐車場には、世界中から集まったドライバーたちと、100台ほどの車とオートバイが停められていた。ワークスのパジェロも目の前で見ることができた。テレビで見た、パリダカールラリーを走った車と同じものだと思う。間近で見るとすごい迫力だ。偶然にも、オートバイを買ったシドニーのショップ、アクションスズキのグレッグにも会った。彼もオートバイで参加するのだという。もちろん香川氏もそこにいた。オートバイでの参加者には日本人も多い。時間が来ると、1台ずつ出発し、郊外の予選のコースへ向かってすっ飛んで行った。

走っているところを直接見ることは出来なかったが、予選は無事終了し、香川氏もわるい結果ではなかったらしい。明日はいよいよウインズサファリラリーのスタートだ。

(5,701km / Stuart Caravan Park, Alice Springs / August 20, 1988)

47日目

ウインズサファリラリーのスタートの日だ。ショッピングモールの中央にはステージが造られていた。埋め尽くす観客。町全体が祭りのように賑わっていた。出場車は1台ずつスロープを登り、ステージ上で紹介のアナウンスを受ける。そしてスタートの合図で、観客たちの声援に送られ、反対側のスロープを下りて飛び出して行く。4輪車から始まり、続いて2輪車が出発する。最高速度の高い4輪車を先にスタートさせるのは、事故を防ぐためだという。全車が出発し終わるまでに数時間かかったが、香川氏の出発もしっかりと見送ることが出来た。

ここアリススプリングスを出発した彼らは、北へ向かってダーウィンへ行き、その後東南へ向かってシドニーへとゴールする。シドニーに着くのは2週間ほど後になる。過酷なラリーだ。彼の無事を祈る。ゴールを見届けることが出来ないのが残念だ。

自分も再び旅を続けることにしよう。次はエアーズロックだ。出発に備えてエンジンオイルの交換をする。距離計を見ると5700kmになっていた。

(5,717km / Stuart Caravan Park,Alice Springs / August 21, 1988)


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