australia


第12章アリススプリングスへ戻る
−The Diary 1988 in Australia−

54日目(August 28)
 アリススプリングスへ向かう途中、面白いものを見つけた。宇宙からの隕石によって出来たクレーター群だ。本物のクレーターを初めて見る。これは凄い。大小のクレーターが集まり、大きいものは直径が数10mある。隕石の持つエネルギーは恐るべき大きさだ。
 再びここアリススプリングスまで戻ってきた。5日ぶりだ。ここに来るとなぜか落ち着く。シドニーを出発してからすでに1ヶ月が過ぎ、トラベラーズチェックの残りが少し不安になってきた。自炊に使っているガソリンコンロも壊れそうだ。走行中の震動で、口金部分の部品が半分折れてしまっている。まだしばらくは使えると思うのだが。
( Stuart Caravan Park / Alice Springs / 7,133km )

55日目(August 29)
 気になっていたガソリンコンロの口金を治した。折れていた部分を針金を使ってなんとか固定する。これならまだ十分使えそうだ。
( Stuart Caravan Park / Alice Springs / 7,151km )

56日目(August 30)
 ずっと会えないで心配していたが、偶然にも野村氏と会うことが出来た。この町に着いたばかりだが、早くも明日には南へ向かって出発するのだという。日本人の旅行者は、誰もが皆先を急いでいるようだ。心にだけは余裕を持ちたいものだが、時間の余裕もなかったりするから仕方ないのだろう。8月11日に出会った小野山氏もそんな話をしていたことを思い出した。
 スーパーマーケットでステーキ用の牛肉を買い込み、彼らとバーベキューをやった。この国では肉が安い。5ドルほどで、肉を腹一杯食べることが出来た。
( Stuart Caravan Park / Alice Springs / 7,188km )

57日目(August 31)
 ウインズサファリラリーの予選に使われたコースを走ってみた。この町の周辺には、原野の中を細い道が沢山ある。何の用途に使うのか分からないが、未舗装のおもしろい道だ。ラリーの予選にも、その一部が使われたのである。
 コースを走っていると、突然アボリジニと遇ってしまった。狭い道の前方を二人で塞がれ、逃げ場はない。結局その夫婦らしきアボリジニ達にオートバイを停めさせられた。
 いきなり彼らが喋り出す。英語のようだが、何を言っているのかよく分からない。怖いので、すぐ逃げられるようにとエンジンは切らずにいた。しかし、エンジン音で話し声が聞こえないと思ったらしい。エンジンを止めろと言ってきた。仕方なく、覚悟を決めてエンジンを切った。
 彼らはべらべらと早口で喋り続ける。自分達は向こうの川を越えてここまでやって来たのだと言っているようでもある。よくわからないが、怒っているような気もする。こっちの腕を掴んでくることもあった。しかし、ひと通り喋り終えると、僕の肩を軽くぽんぽんと叩いて去って行った。何だったのだろうか。わけが分からないが、これでひとまず安心だ。エンジンをかけて、再びオートバイを走らせた。
 あしたは出発しよう。北へ向かって。
( Stuart Caravan Park / Alice Springs / 7,327km )


第11章キングスキャニオン・後編back< -home -up ->next第13章再び北へ・前編