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第11章キングスキャニオン・後編
−The Diary 1988 in Australia−

53日目(August 27)
 昨日偶然会った山下氏から聞いた話によると、ここから先は道が悪くなるらしい。キングスキャニオンまでは、ピストンになるので、ここに張ったテントと荷物はそのまま置いて行くことにした。軽くなったオートバイで行くほうが安全だ。
 しばらくは今までと同じような路面が続いた。しかし最後の6kmほどになり急に砂が深くなってくる。細かな赤い砂はまるで小麦粉のようだ。やはり荷を置いてきてよかった。タイヤが全く砂を捉えず、全然真っ直ぐ走れない。転びそうだ。安全を考えて、両足を着くようなスピードでオートバイを進めた。ソロツーリングでは転倒を極力避けなければならない。オートバイの故障と身体の故障はどちらも命取りとなる。
 何とか目的地に着くことが出来た。ここからは、キングスキャニオンのトレッキングコースを歩くことにする。靴も、オフロードブーツからトレッキングシューズに履き替えた。準備は万全だ。
 川の流れる峡谷を下に望みながら、少しずつ自分の足で高度を稼いでいく。奇妙な形をした褐色の岩がどこまでも立ち並ぶ。目印を頼りに、その間を縫うようにして歩く。迷路の中を歩いているようだ。高度感を感じる。眼下には、両側から張り出した迫力ある岩壁に挟まれて、峡谷が横たわっている。そして、その谷底には木々が鬱蒼と生い茂る。熱帯のジャングルを思わせるほどだ。
 そして、往復で約4時間のトレッキングを無事に終え、オートバイでキャンプグラウンドのテントへ戻った。
( Kings Creek Campground / Kings Creek / 6,827km )


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