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第5章キャンベラ・前編
−The Diary 1988 in Australia−

25日目 July 30
 海沿いを走るプリンスハイウェイから内陸側へ分岐し、オーストラリアン・キャピタル・テリトリー州(ACT)に入った。そしてオーストラリアの首都キャンベラへ到着する。ここはもともと何もない山中に造った街なのだそうだ。シドニーとメルボルンそれぞれに平等ということで、両都市の中間のこの地を首都にしたのだという。
 ひどく人工的な感じがする街だ。人通りも少ない。
(South Side Motor Park,Canberra)

26日目 July 31
 キャンベラは寒い。標高があるためだろうか、明け方には気温が0度以下になった。日本から持ってきた寝袋が冬山用でよかった。おかげで、なんとか眠ることができた。テントの生地は凍りつき、外に出ようとするとバリバリと音を立てる。テントから出ると、あたり一面に霜が降り真っ白になっていた。
 オートバイの走行距離から考えると、この街でエンジンオイルを交換したい。しかし、今日は日曜日だからバイクショップが開いてない。街を走って探してみたが、やはりどこも閉まっている。なにも急ぐことはない。もう一泊して、明日まで待つことにした。
 髭は伸ばすことに決めていたので、電気カミソリを捨てる。これで荷物も少しは軽くなるだろう。
(South Side Motor Park,Canberra)

27日目 August 1
 昨日見つけたバイクショップへ行き、先ずはオイルとオイルフィルタを交換してもらう。それから、衝動的ではあったのだが、思いきってヘルメットを買い換えた。
 実は、シドニーで買ったアライのヘルメットは少しきつく、1時間もかぶっていると頭が割れるように痛くなってくるのだ。サイズは自分がいつも日本で使っている「S」よりもワンサイズ大きい「M」なのにである。おそらく頭の型が欧米人向けにできているのだろうと思うが、その違いをこれほどまでに思い知らされるとはつらいものだ。新しいヘルメットを買った代わりに、荷物になるので、今までのヘルメットはショップの店員にあげてしまった。
 今度のイタリア製のノーランは快適だ。オフロード用で軽く、頭も全然痛くならない。おかげで気分よく走ることができた。
 キャンベラを離れて再びニュー・サウス・ウェールズ州へ戻る。シドニーから走ってきたプリンスハイウェイに合流し、これを南下する。
 トラベラーズチェックを現金に換えようと思い、途中の街で銀行を探したが、どの銀行も閉まっていた。今日は月曜日だが、もしかすると銀行は何らかの休業日なのだろうか。しかたないので、明日までなんとか手持ちの現金で過ごすことにした。
 8月になった。今日から走行積算距離の記録をつけることにする。走り始めてまだ四日だというのに、オートバイの距離計はもう1000kmを越えている。オーストラリアの雄大さを感じる。
(1269km,East Van Park Riverside,Narooma)

28日目 August 2
 海の色が素晴らしく青く、浜辺のキャラバンパークは快適だ。ここNaroomaでもう一泊し、衣類の洗濯をすることにした。
 コインランドリーで洗った洗濯物をテントの前に干しながら、のんびりと一日を過ごす。スーパーで買ってきた食べきれないパンを少しずつちぎってまくとカモメが集まってくる。カモメたちの表情は思いのほか豊かで、見ていても飽きない。
(1327km,East Van Park Riverside,Narooma)


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