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第5章キャンベラ・後編
−The Diary 1988 in Australia−

29日目 August 3
 ビクトリア州に入ると風景が変わってきた。カナダの森林を思わせる。というか、カナダに行ったことはないがそんな気がした。
 夕方まで走って今日は距離を少しだけ稼ぐ。シドニーからメルボルンまで、あと3分の1ほどだ。
(1663km,Caravan Park,Orbost)

30日目 August 4
 キャンベラからずいぶん南下してきたが、ある程度は覚悟していた寒さがそれほどでもない。オーストラリアは南半球だから南へ行くほど寒いはずだが、標高が違うからなのだろうか。それとも、そろそろ春なのだろうか。
 時間が過ぎるのが早い。日本を出てからもう1ヶ月になった
(1792km,Tourist Caravan Park,Bairnsdale)

31日目 August 5
 セールという町でプリンスハイウエイを離れた。ここからメルボルンまでは海寄りの道を行くことにする。200kmほど走ったあたりで、それまで曇りがちな天気ではあったが、急に強烈な雨が降ってきた。すぐにレインウェアを着る。しかし寒い。身体の芯まで冷えてくる。
 ついにこの寒さには勝てず、今日はここまでにする。あまりの寒さにテントを張る元気もなく、Wonthaggiという町でモーテルに泊まることにした。一泊35ドルは今の自分には少し高いが、広くていい部屋だ。シャワーとトイレット、テレビまである。たまにはこういうのもいいだろう。
 明日は、野生のペンギンを見ることができるというフィリップアイランドへ行こうと思う。ここからあと30kmほどだ。晴れるといいのだが、テレビの天気予報によると期待は無理のようだ。
(2075km,Motel,Wonthaggi)

32日目 August 6
 フィリップアイランドは周囲が50キロほどの島だが、橋が渡っているため、車でもオートバイでも簡単に行くことができる。ここでペンギンを見ることができるのは夜になってからだ。毎日決まった時刻になると、海岸の巣穴に戻るために海から上がってくるらしい。
 早めにフィリップアイランドのCowesという町に着いたので、夜までにはまだ時間が十分ある。キャラバンパークにテントを張ってから、とりあえずオートバイで島を周ってみることにした。雨が時々降るような天気だが、レインウェアが必要なほどではない。
 コアラの保護区域という場所へ行く。オートバイを停め、ユーカリの林の中を歩いて行くとコアラを何匹か見つけることが出来た。木の上でじっと動かないぬいぐるみのようなコアラは、見ていてもあまり面白くはないものだ。そんな感じで島をのんびりと周っていると、そのうちに夜になった。
 驚いたことに、ペンギンの来るという海岸に出るためには、入場料を払わなければならないという。仕方なしに2ドル25セントの入場券を買う。海岸へ行き、しっかりした造りの柵の内側でペンギンを待つことにした。海岸はちょっとしたステージのようだ。あたりも暗くなった頃、係員の放送と同時にぞろぞろとペンギンが砂浜から上がってきた。その数は数十匹もいるだろうか。フェアリーペンギンという種類で、小さめのペンギンだ。彼らは順序よく並んで歩き、草むらの中にいくつもあいてる巣穴へ吸い込まれるように消えて行った。なんとなく飼い慣らされたような感じがしたのだが、これは本当に野生なのだろうか。
 再び雨が降り出す。たまたまここで知り合った日本人の女性とも別れ、一人でキャラバンパークに帰った。
 メルボルンまであと120kmほどだ。明日はいよいよメルボルンだ。
(2253km,Bushy Park Caravan Park,Cowes)


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