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第7章北へ
−The Diary 1988 in Australia−

36日目 August 10
 ハイウェイを走っていると、予想外の発見をすることがある。Tower Hillと書かれた標識を見つけた。ちょっと寄ってみることにして、その小さな標識を頼りに脇道を入っていくと、突然それは現れた。目の前に口を開ける巨大な噴火口。その直径は1km以上はあるように見える。火口の底には水が流れ込み、巨大なカルデラ湖を造っていた。中央には島が浮かんでいる。自然は凄い。何気なくこれほどのものを見せつけてくれる。
 小雨の中、Port Fairyという小さな町に着いた。屋根が欲しい。キャラバンパークで、キャビンと呼ばれる簡素な小屋のようなものに泊まることにした。キッチンとベッドが付いて一泊22ドルだ。居心地はそれほどわるくないが、少し寒い。
(2957km,Gardens Reseve Caravan Park,Port Fairy)

37日目 August 11
 サウスオーストラリア州に入った。時差のため、腕時計の針を30分戻す。東西に大きいオーストラリアには3つの標準時があり、その時差は最大で2時間にもなる。やはりスケールが違う。
 Mt.Gambierという町でオートバイのエンジンオイルを交換する。これから先、日本では考えられないような長距離を走ることになる。エンジンは大切だ。
 プリンスハイウェイを北へ向かう。途中、観光ポイントのような標識を見つけたので、寄ってみることにした。自分以外には誰ひとりいない。静かだ。それは水路だった。岩盤を30m掘り下げた水路が1kmほど続いているという。この上流にある沼の水を排水するために、土地の所有者がたったの2人掛かりで、3年間かけて掘った水路だ。見下ろすと足元から30mの底を水が流れていた。
 そんな立て看板の説明書きを読んでいると、オートバイのエンジン音が聞こえてきた。1台のオートバイがハイウェイからこちらに入ってくる。カワサキのKLR250だ。声をかけると日本語が返ってきた。こんなところで日本人と会えるとは思いもしなかった。小野山氏はダーウィンからここまで南下してきたという。自分とは逆のルートだ。向こうの状況は相当過酷らしい。身が引き締まる。
 彼とはハイウェイを南と北に別れた。なぜか、ひとりで走る寂しさを感じた。
(3289km,Lakeside Select Caravan Park,Robe)


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